エレベーターの沈黙、隣の奥様が「女」に変わるまで

私、健太(けんた)24歳。

隣の部屋の美里(みさと)さんは、いつも非の打ち所がないほど清楚で、僕にとっては眩しすぎる存在だった。

仕事帰りの夜、偶然乗り合わせたエレベーター。

「こんばんは、健太さん」

「あ、こんばんは。お疲れ様です」

そんな、いつも通りの当たり障りない挨拶を交わした直後、「ガクンッ!」という、心臓が跳ね上がるような衝撃と共に、エレベーターが停止した。

非常灯だけの薄暗い箱の中。

インターホンで管理室に連絡を終えたものの、復旧までには時間がかかると告げられた。

「……参ったな、結構かかりそうですね」

僕が努めて明るく言うと、美里さんは壁際に小さくなって座り込んでいた。

「……健太さん、ごめんなさい。私、こういう場所、少し怖くて」

膝を抱える彼女の指先が、小刻みに震えている。

彼女は自分のワンピースの裾を、ぎゅっと握りしめては離し、また握りしめている。

狭い密室。

二人の間には、一メートルほどの「他人」としての境界線があった。

でも、時間が経つにつれ、熱気の逃げ場がない室内で、二人の吐息だけが嫌に大きく響き始める。

僕は彼女の隣に腰を下ろした。

「大丈夫ですよ、僕がいますから。……冷えてますね」

僕は彼女の肩を、そっと支えるように触れた。

彼女の身体がびくりと跳ねる。

「……あ、……ありがとう」

彼女は僕の掌の熱から逃げるどころか、自分から僕の手の甲に、震える指をそっと重ねてきた。

その瞬間、清楚な「奥様」という壁が、音を立てて崩れた気がした。

沈黙が続く中、美里さんがふっと僕の肩に顔を寄せた。

「旦那は……今、海外なの。こういう時、一人は本当に心細くて……」

彼女の声が湿り気を帯びる。

首筋から漂う柔らかな石鹸の匂いと、微かな汗の匂いが混ざり合い、僕の理性をじりじりと削っていく。

指先で彼女の顎をすくい上げると、潤んだ瞳が僕をじっと見つめていた。

彼女の視線が僕の唇に落ち、そのまま動かなくなる。

言葉はいらなかった。

吸い寄せられるように顔が近づき、唇が重なる。

最初は震える唇同士が触れるだけの、確認するようなキス。

でも、一度触れてしまうと、閉塞感の中で抑えられていた本能が一気に爆発した。

「ん、んむっ……んちゅ、……れろぉ、……じゅるるぅ……っ!!」

暗闇の中で、絡み合う舌の音だけが「クチュル」と卑猥に響く。

美里さんの手が、僕の首筋に強く回され、爪が食い込むほどに抱き寄せられた。

「健太さん……っ、……もう、自分がおかしくなりそう……っ!」

美里さんはワンピースのボタンを、焦るような手つきで自ら外していった。

剥き出しになった白い肩が、赤色の非常灯に照らされて艶かしく光る。

僕は彼女を壁に押し当て、薄い下着の中に指を滑り込ませた。

「ひ、あぁぁぁーーーッ!! ……じゅぷ、……クチュ、クチュルゥ……ッ!!」

「はぁ、はぁっ! 美里さん、……ここ、……こんなに熱くなって……」

「やだ、……言わないで……っ。……でも、……そこ、もっと、強く……っ!!」

指先の刺激に、彼女は声を押し殺しながら、腰を狂ったようにくねらせて僕に縋り付く。

「奥様」

という仮面は、もうどこにもなかった。

僕は自身の猛々しい怒張を、彼女の熱く熟した最奥へと、ゆっくりと、楔を打つように沈めていった。

「ズブッ、……ぬぷりぃぃッ!!」

「は、あああああぁぁーーーッ!! ……んんっ、……んぐぅぅっ!!」

逃げ場のない鉄の箱。

肉と肉がぶつかり合う「パンッ、パンッ!」という乾いた音が、壁に跳ね返って僕たちの耳を直接犯していく。

「あ、あんっ! ぁあぁっ! ……健太さんっ、……全部、……全部入ってるぅぅ!!」

「出すよ、美里さん……。……奥まで、全部……っ!!」

「いいっ、……美里の中に、……健太さんの、……熱いの全部、……注ぎ込んでぇぇッ!!」

理性が完全に消え去り、私たちは互いの肌を噛みしめるようにして、最後の一撃を叩きつけた。

「いっちゃう、……んんーーーっ!! ぁあぁぁーっ!!」

「ビョッ、ビョッ、ドッピュンッ!!」

何年分もの抑圧を吐き出すように、熱い白濁液が彼女のナカへと何度も何度も注がれていく。

「んんーーーっ!! ……熱いっ、……健太さんの匂い、……お腹の中まで、……染み込んでくるぅぅ!!」

私たちは重なり合ったまま、激しく痙攣し、狭い密室の中で、混ざり合った蜜の匂いに包まれて絶頂の余韻を貪った。

数分後、不意に電気が復旧し、エレベーターが動き出した。

私たちは無言で服を整え、何事もなかったかのように扉の前に立った。

扉が開く瞬間。

美里さんが僕の耳元で、消え入りそうな声で囁いた。

「……また、旦那がいない夜に……ベランダのカーテンを、半分だけ開けておくから」

彼女は上品な微笑みを浮かべ、そのまま自分の部屋へと消えていった。

僕は、まだ自分の中に残る彼女の芳しい匂いを感じながら、一人、暗い廊下に立ち尽くしていた。

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